日常

鍼灸と自賠責保険の現状。

当院では、開業当時から自賠責保険適応疾患を積極的に取り扱って参りました。

病院や接骨院と連携して治療を行い、多くの事故被害者の方々の怪我の回復、症状軽減に寄与してきたと自負しております。

交通事故による頸や腰の痛み、手足の痺れ、自律神経の乱れによる諸症状などに鍼灸は非常に有効で、投薬や理学療法だけでなく、鍼灸を併用することの有用性は、これまで何例も目の当たりにしてきました。

先日、追突事故に遭ってしまい、頸と腰の痛みを訴える患者さんが来院されました。

当然、当院へ来院する前に整形外科にて診察を受け、骨折や脊髄損傷などの鍼灸不適応疾患がないことが確認されておりましたので、鍼灸治療も自賠責保険の適応になる旨をお伝え致しました。

翌日、その患者さんは早速保険会社へ連絡し、鍼灸治療を併用したいという旨を伝えたところ、担当医師の同意が必要と言われたそうです。

そして通院していた整形外科でその旨を伝えると、鍼灸マッサージへの同意は一切行わないと断られ、その上、他院へ通院する場合は以後の診療をお断りすると言われたそうです。

事故に遭い、辛い思いをしているのに、当院での治療費まで自己負担となってしまい、私としても大変心苦しく、その病院に対しては大変口惜しい気持ちでいっぱいです。

鍼灸治療は厚労省から認められている医療で、事故被害者には希望する医療を受ける権利があるはずなのに・・・。

そもそも原則として、自賠責保険で鍼灸を受ける場合、医師の同意は必要ありません。

おそらく同意が必要というのは、保険会社側の独自の規定だと思われます。

健康保険を使う場合には医師の同意書が必須となりますので、自賠責でも必要でしょ?という保険会社の考えなのかもしれません。

思い返してみれば、たしかにここ数年、保険会社に医師の同意を求められるケースが増えていました。

業界的にそういう流れになっているのかもしれません。

ただ、今までは一度も同意を断られたことはなかったですし、医師からの紹介で来院することもありましたので、その点をあまり気に留めたことはありませんでした。

いつもは保険会社から鍼灸を受けることを渋られるケースが多く、その点に関して患者さんにも注意を促したりしていたのですが、今回は保険会社の方から医師に同意を断られることがあるので相談の仕方などをアドバイスされたり、鍼灸治療併用に対して前向きに対応して下さったそうです。

ということは、最近、会社の方針で鍼灸併用に医師の同意が必要になり、同意を求めたら断わられる事例が増えてきたということなのかもしれません。

前述したように、健康保険適応の際は、医師の同意書が必要です。

そして健康保険の場合法律上、同一疾患での西洋医学と東洋医学の併用は認められていませんので、鍼灸に同意するということは、その患者を鍼灸師に引き渡すということになります。

悪い言葉を使うと「患者を奪われる」ということです。

それに、その患者は自分には治すことが出来ないと認めることにもなり、自尊心から頑なに同意しないという整形外科医も多いと聞いたことがあります。

しかし、自賠責保険は鍼灸との併用が出来ますので、そういうケースはないと私は思っておりました。

今までも医師の方々と一緒に患者さんを治療して、共に地域医療に貢献してきたつもりでおりました。

まさかこんなことがあるのかと、大変悲しい思いです。

まぁ、でも、先生ごとに色々な考え方がありますし、百歩譲って鍼灸に同意出来ないといいうことは理解することも出来なくはありません。

悔しいですが。

しかし、今回それ以上に問題なのは、他院へ通院した場合は診療をお断りするという点です。

これは診療拒否じゃないですか?

医師には法的に応招義務が課せられています。

医師法19条には「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」と定めています。

鍼灸を併用して受けることは、診療を断わる正当な事由なのでしょうか?

診療拒否は違法行為であると共に、医療倫理に反する行為です。

同意を拒否するのも、診療を拒否するのも、どちらも病院側の事情で、患者さんのことは一切考えていません。

病院や医師のことをとやかく言う立場にはありませんので、一応この辺りでやめておきますが、私としては、まず患者さんのことを第一に考え、患者さんが望む形のより良い医療が提供出来るように当院では方針を決めてきました。

これからもそれは変わりません。

そして、多くの医師に鍼灸を理解して頂き、鍼灸師を信頼して頂けるよう、これからも努力を重ねたいと思います。

すべては患者さんのために。

それぞれの医療従事者がそれぞれに相互理解を深め、連携し、一人でも多くの患者さんを苦しみから救うことが出来るようになればと思います。

 

 

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