先日報道されたプロ野球選手の沢村投手の件について、鍼灸師として多少触れておかなければならないと思い、少しだけ自分の考えを綴ってみたいと思います。

鍼灸業界の今後を思うと無視できない事案かと思いますので。

まず、このニュースを知らない方に簡単に説明しますと、巨人の投手である沢村選手が肩に違和感を訴えたため、球団専属のトレーナーが「はり治療」を行ったそうです。

しかし症状は改善せず、複数の医療機関で検査を受けた結果、長胸神経麻痺と診断され、原因は「はり治療により長胸神経が損傷した可能性が高い」とされ、球団側がトレーナーの「施術ミス」を認め沢村選手に謝罪をしたとのことです。

この話を初めて聞いた時、咄嗟に口に出た言葉は「何ソレ?あり得ないんだけど。」でした。

麻痺が出るほど神経を損傷させるって、どういう治療をしたの??って感じです。

少なくとも、私が使っている髪の毛よりも細いくらいの鍼で神経を損傷させるのは至難の業です。

まして長胸神経など、どこにどう打ては当てられるのかもわかりません。

解剖学的に神経の走行はわかりますが、実際は個人差がありますし、しかも超細いので、狙っても当てられるものではありません。

ですので、そのトレーナーがどのような治療を施したのか知りたいのです。

もし通常の施術でもそのリスクがあるのだとすれば、それを回避するために対策を講じなければなりませんからね。

ですが、そういった情報も、何を根拠に医師が「はり治療のせい」と判断したのかも明確に示されていません。

そもそも、肩に違和感があったから治療を受けたわけで、それが治らないのは治療の効果がなかったというだけなのでは?

それなのに肩が治らないのは鍼のせいだ!っておかしくないですか?理屈として。

長胸神経麻痺に関してですが、これはおそらく胸郭出口症候群によるものかと推測できます。

野球の投手に多くみられる疾患です。

頸肩周りの筋肉の使い過ぎによる過緊張で神経や血管が圧迫されて痺れや脱力感、痛みなどを生じさせます。

沢村選手は筋トレ好きで有名な選手だったようです。

今回の肩の状態も、筋トレで改善しようとしていたようですし、投球だけでなく過度のトレーニングを含めたオーバーワークが原因で胸郭出口症候群となり、長胸神経が斜角筋に圧迫されて前鋸筋の麻痺に繋がったのではないかと、当院の患者さんであればそのように推察します。

筋肉の過緊張による症状であれば、その筋を緩めれば改善しますので、これは鍼灸の適応疾患です。

適切に治療をすれば症状の改善に繋がる可能性は高いと思われます。

残念ながらそのトレーナーの施術では改善させられなかったようですが、少なくとも長胸神経麻痺は「はり治療のせい」ではなく、胸郭出口症候群が原因なのでは?と現時点の情報からでは、そのように考えるのが妥当かと思います。

ただ、今回の問題は、それを「医師が言っている」ということです。

医師が言っているのだから間違いない。

そういう空気ありますよね。

何の根拠もなくても。

医師だって人間ですから誤診もあります。

今回の件に関しては、病院で投薬などしてもあまり改善しないから、外的要因、はり治療のせいってことにしちゃおうという意図が若干見えるような気がします。

巨人側も医師が言うのだから・・・と認めてしまったのかなと。

すべて憶測にすぎませんが。

本当はそのトレーナーが「はり治療」と称する何かとんでもないめちゃくちゃな治療をしていたのかもしれませんしね。

一概に「はり治療」と言っても、鍼灸師によって治療方法が全然違います。

だからこそ、今回の報道で「はり治療は怖い、危ない」というイメージを持たれるのが本当に困るのです。

多くの、いやほとんどの鍼灸院で、このような事故は起こらないと思います。

少なくとも当院で行う鍼灸治療では絶対に起こり得ません。

このようなことで鍼灸のイメージが傷つけられるのはとても残念です。

そのトレーナーの施術の詳細と、医師が「はり治療のせい」と決めつけた根拠を、一日も早く提示して頂きたいと切に願います。